通天閣(大阪市浪速区恵美須東1)地下劇場(スタジオ210)で毎週月曜に催されてきた歌謡ショー「通天閣歌謡劇場」が6月28日、最終公演「~また逢う日まで~」を迎え、公演が行われる前に叶麗子さんらが今後、場所を変えて同ショーを存続する方向であることを発表した。
歌謡ショーは1989年から松竹芸能が週末に興行を開き、2008年に寄席「通天閣劇場TENGEKI」を開くようになってから毎週月曜に興行を行ってきた。NHKの連続テレビ小説「ふたりっ子」の舞台にもなり、登場する演歌歌手・オーロラ輝子のモデルで「通天閣の歌姫」の愛称で親しまれる叶麗子さんなど1日に約8人の歌手が出演した。
通天閣を運営する通天閣観光と松竹芸能との賃貸借契約が6月末に切れ、寄席は道頓堀で7月28日にオープンする「角座」に移す。松竹側から「歌謡劇場は週1日(月曜)または2日(土曜・日曜)の賃借利用」の案が出たが、通天閣は5月15日に取締役会を開き、「地下補強工事の必要性」「繁盛期(夏場)の通天閣に並ぶ来塔者の安全確保としての待機場所としての利用」などの理由で6月末に歌謡劇場への提供は終了すると発表。地下は今夏、お化け屋敷が催され、その後は補強工事に入る。通天閣は観光施設としてふさわしい有効活用を検討するという。
叶さんは取締役会の前、通天閣の西上雅章社長に「どんな形でもいいから劇場を残してほしい」と懇願するなど劇場存続を訴えてた。ファンが始めた署名活動では1万人以上の署名が集まった。
存続は通天閣近くの串かつ店「横綱・通天閣店」(旧づぼらや別館)の5階(宴会フロア)を劇場に改装する方向で、同店を運営する新世界串かつ振興会と昨夜、合意した。2013年度中に新劇場の開設を目指すという。イベントプロデューサーの坂本敏生さんが存続に向けて動き、新世界町会連合会とも協議した。坂本さんの父親は、叶さんも同劇場ができるまでに出演していたジャンジャン横丁にあった劇場「新花月」の取締役だったという。
当日は出演する歌手に坂本さんが「どうやって劇場を作っていくのかまだまだ山がある。お金はないのでファンと歌手が作る市民劇場を作る。何で公演前に話したというと涙の公演にしたくなかった」と話すと、出演歌手から大きな拍手が起きた。叶さんは「ものすごくうれしい。今朝知ったときは夢かと思った。坂本さんは救世主。新花月が閉館になったときも新世界の人たちが助けてくれて劇場ができた。同じことが起きている」と話し、うれし涙を流した。