大阪メトロ谷町線・阿倍野駅近くで開業直前に隣の飲食店が出火原因の火事で全焼したベーカリー「ブーランジェリーショー」が、復活に向けて動き出している。
同店のオーナー川端正悟さんはパン職人で38年のキャリア。西宮市ではフランチャイズ契約でベーカリーを14年経営していたが、娘3人と一緒に思い通りの店を作ろうと、長女の高田舞美さんが住んでいる近くの大阪市阿倍野区で開業することにした。
開業4日前の5月5日に起きた火事で同所での開業は不可能になり、賃貸借契約は終了。火事の原因は、隣の飲食店の従業員が油を火にかけたまま外出したのが原因だった。木造の建物は倒壊する恐れがあることから、しばらくの間は周辺が立ち入り禁止になっていてほどだった。内装や厨房(ちゅうぼう)機器などの開業資金約3,000万円は金融機関からの融資で調達したが、保険で下りるのはわずか100万円ほどだったという。
火災があった当日夜に家族が集まり、復活を誓ったが借金だけが残る状態。その日から同店のインスタグラムに、地域の人からの多くの励ましの言葉が寄せられ、その中にクラウドファンディングの勧めがあり、支援を募ることにした。
5月29日に始めたクラウドファンディングはSNSで大きな話題となり、目標金額の1,000万円は1週間で到達。現在は1100人以上から、計1,200万円以上の支援が集まった。支援を呼び掛けるチラシは約30の近隣店舗が協力して、それぞれの店に置かれている。募集は7月30日まで。
クラウドファンディングで多くの人の支援があり、SNS上の励ましも影響したのか、金融機関から新たに融資を受けられるようになった。火災現場近くにあった貸店舗を近いうちに契約する予定で、10月中旬ごろには開店できる見込みという。
現在は、麗奈さん(三女)と優里さん(次女)が父の知り合いのベーカリーで修業しているほか、新たなメニュー開発などの会議を重ねるなどして、4人は開業に向けて多忙な毎日を過ごしている。
今回出店しようとしている店は前回と比べて面積が倍になったことや、借金も倍になったため売り上げ目標も倍になったと娘3人は厳しい表情を見せるも、正悟さんは「奇跡的に順調にいっている。3,000万円の借金がある中で追加の融資が受けられるのは100%無理だと言われていた。あの店のままだと気軽にできたが、借金が倍になったので命懸けでやらないと」と笑顔を見せる。
正悟さんは「(三女と次女が)知り合いの店で修業することは後から知った。火事に遭う前はそこまでの熱いものを感じていなかった。この子らのハートに火が付いた」と話し、「近所の方、全国の方、多くの方から支援をいただいた温かい気持ちを忘れずに、熱いパンを焼いていきたい」と意気込む。