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ヒューマンドキュメンタリー映画祭《阿倍野》、伊勢真一監督に聞く

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映画祭とドキュメンタリー映画における環境について教えて下さい。

伊勢真一監督創り始めたころ(約30年前)よりも創る人が多くなったし、ミニシアターで上映されることも1980年、90年代と比べると増えました。必ずしもドキュメンタリーのクオリティーが高まっている訳ではないようにも思うけど多様になったと思う。阿倍野でドキュメンタリー映画祭を立ち上げたのは2003年。映画祭に取り組む理由のひとつは、ドキュメンタリーは見てもらう機会が少ないからです。多様な作品を多様な人たちに集って観てほしい。観てもらうことで、こういう視点があるのかと感じられると思います。忘れずに、ずっと考えないといけないものことも有ると思う。(東日本大)震災のこともそう。ドキュメンタリー映画を創り、観てもらうことの意味はその辺りにもあると思う。

奈緒ちゃん
「突然発作を起こす病気「てんかん」と知的障害をもって生まれた奈緒ちゃん。奈緒ちゃんと家族の『しあわせ』を写した12年間の記録。同映画祭でも上映する。


映画祭で上映される伊勢さんの作品「奈緒ちゃん」は撮影期間が長いですね
現在も自主製作で撮影を続けていて、33年目に入っています。何ごとも続けていくことが大事だと思って撮り続けているのです。その場限りの情報に流されがちな、既存のマスメデイアとの違いでもあるかもしれない。私は映画を撮るときは、どんな作品でも最低1年は掛けています。四季の巡りの中で、そこに生きている人や物や自然が、どんな風に変わっていくのかを見ないと物語は生まれない。何で撮り続けるのかというと、なかなか本当の意味での自分の答えに辿りつかないからかな?ひとつ解決してすぐ次に、なんて出来ません。

既存メディアと方向性が真逆のように感じますね
観るとか読むとか、受けとめる側が自分の頭の中で考えないと情報が伝わったと言えないと思う。映画祭をするということはそういう場をできるだけ作ること。私は映画製作で答えがすぐにわかるような描き方はしません。一番よくないのは自分で考えない人、感じない人が増えることでしょう。自分たちが時間を掛けて創ったものを、観た人それぞれが違った風に受け取ってもらっていい。映画祭をするということは、そういう場をできるだけ作ること。

ドキュメンタリー映画を観るには怖さがありますよね
そう、怖さがある。考えないといけないことを、自分のこととして考えたくない怖さでしょう。例えば認知症について考えると怖い。人口比から10年、20年経つと認知症患者が膨大に増えて、家族や社会全体の深刻な問題になるにちがいありません。

映画祭で行われる短編のコンテストは?
プロから見たら、もっとちゃんと撮れよと思うものもあるけど、毎年1、2本心を打たれる作品がある。来る人も楽しみにしているみたいです。

最後に映画祭に来られる方にメッセージを
映画祭がこれまで培ってきた様々な思いを、観る人に受け取ってもらえたらうれしい。

伊勢真一さん(ドキュメンタリー映画監督)

1949年東京生まれ。1995年、重度の障害を持つ少女の12年間を追った作品「奈緒ちゃん」で、毎日映画コンクール記録映画賞グランプリを受賞。近作に「風のかたち-小児がんと仲間たちの10年-」「大丈夫。-小児科医・細谷亮太のコトバ-」「傍(かたわら)~3月11日からの旅~」。最新作は「小屋番 涸沢ヒュッテの四季」。ヒューマンドキュメンタリー映画祭〈《阿倍野》〉など各地でドキュメンタリー映画祭を企画。

ヒューマンドキュメンタリー映画祭《阿倍野》

2003年に阿倍野区役所と伊勢監督が中心になって始まる。6年目から市民ボランティア有志が自主運営して継続し、今回が11回目。今年は阿倍野区民センター 大ホールで8月30日~9月1日、3日間で伊勢監督の「奈緒ちゃん」「旁傍(かたわら)~3月11日からの旅~」などドキュメンタリー映画9作品の上映や映画監督のトークライブ、公募で集まった短編映画のコンテスト入賞作品の上映などが行われる。スケジュールなどの詳細はホームページで確認できる。入場料は1日券=2,500円(前売り2,000円)、3日通し券=5,000円。

ヒューマンドキュメンタリー映画祭《阿倍野》

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