あべのアポロシネマ(大阪市阿倍野区)で2月6日、映画「天王寺おばあちゃんゾウ 春子 最後の夏」の上映が始まった。同日、監督などが登壇したトークショーも行われた。製作はテレビ大阪。
天王寺動物園(天王寺区)で2014年に死んだアジアゾウ「春子」(雌、当時の推定年齢66歳)を追ったドキュメンタリー作品。春子は1950(昭和25)年に来園し、当時は戦争の爪跡が残る大阪で希望の星のような存在だった。
同作では、2013年夏に春子が運動場に出るのを拒む様子など、バックヤードで密着した映像のほか、飼育員が飼育方法について話し合う様子も収録。カメラマンが泣きながら撮影したという最期の日、横たわった春子を飼育員総出で懸命に立たそうとした様子も収められている。昨年11月にシネ・リーブル梅田(北区)で初公開された。
当日は上映後、人見剛史監督、カメラマンの増田健さん、飼育員の西村慶太さんが登壇。司会は同作でもナレーターだったテレビ大阪アナウンサーの鈴木理加さんが務めた。
約10年間、春子の担当だった西村さんは「春子はいろんな功績を残してきたが、亡くなった後も映画になって地元の映画館で上映されるすごいゾウ」とたたえた。「(春子の存在は)ひと言で言うと恩師。大事なことを教えてもらった。動物を飼育している感覚は無く、ヘルパーが心を閉ざしているお年寄りに少しずつ歩み寄る感じだった」とも。
人見監督は「このアポロシネマは戦前からあった劇場なので、春子が来た昭和25年当時も映画を見てから動物園に行った人もいたのでは。そんな劇場で公開を迎えて感動している」と話し、「映画自体は30分のドキュメンタリー番組がきっかけ。最初から映画は考えていなかった。古いニュースで見たゾウがまだ生きていると知り、すごいと思って取材した」と明かした。