通天閣(大阪市浪速区恵美須東1)で10月2日、同日に着工する耐震改修工事の安全祈願式が執り行われた。
通天閣の脚部の既存構造を切断し、天然系積層ゴムやロックダンパーなどの免震装置を設置することで、地震発生時には揺れが半減するという。総工費は約6億円。工期は来年6月30日までを予定し、営業は通常通り行う。工事を請け負う竹中工務店によると展望タワーでは世界で類を見ない「免震改修工事」で、工事中の地震の安全にも配慮しているという。また、国の登録有形文化財に指定されていることから外観が大きく変わらないようにした。
大阪大学大学院・工学研究科の宮本裕司教授らによる耐震計測によると、鉄骨造建物として構造的な劣化は進んでいないが、巨大地震の発生で鉄骨が変形する恐れがあることが判明したという。
通天閣では今回の改修工事などの取り組みを「Next210(ツーテン)」プロジェクトと命名。初代通天閣(1944年に解体)が建てられた1912(明治45)年から210年後の2122年に向けて同塔の耐震性を向上させ、登録有形文化財として価値を維持していくのが目的という。
合わせて、初代通天閣の天井に広告を掲出していた化粧品メーカー「クラブコスメチックス(当時は中山太陽堂)」(西区)が復刻した巨大天井画を寄贈し、来年夏に設置が完了する予定。
安全祈願祭に関係者らが出席。通天閣を運営する通天閣観光の西上雅章社長は、「今回の工事は新世界初、いや世界初。もともと(耐震構造の父と呼ばれ通天閣を設計した)内藤多仲先生によれば、関東大震災級の地震や風速80メートルに耐えられると聞いているが、さらに安全なタワーにする」と話した。