文の里商店街(大阪市阿倍野区)で昨年8月から掲示されているユニークなポスターが現在、ツイッターなどネット上で大きな話題になっている。
「文の里商店街ポスター展」として、電通関西支社のコピーライターとデザイナー約60人が52店のPRポスター約200点を、商店街再生を目的に研修も兼ねてボランティアで制作した。同展の宣伝用ポスターには商店主の集合写真に「買わんでええから見にきてや」のメッセージも。
ビキニ姿の女性の写真を使った鶏肉店の「いいムネあります。」、薬局の「アホにつける薬はあれへん。」、豆腐店の「清き一丁を。」などユニークで笑える作品を店頭などに掲示。鮮魚店では店主の西尾三彦さん自身の「人拓」を写した作品で、「見た人に指をさされて笑われている」とほほ笑む。
昨年末には、作品の人気投票を受け付ける「文の里商店街ポスター総選挙」も実施。グランプリには、高齢を理由に閉店した大嶋漬物店の作品3点が選ばれた。作品は店先に立つ店主の写真に「ポスター? はよ作ってや。死ぬで。」「やっと気付いた。この仕事、しんどい。」「遊ぶで、これから。」と書かれている。
もともとは同社コピーライターの日下慶太さんが通天閣近くの商店街・新世界市場の店主らとイベントを通じて交流して、「面白いポスターで商店街を盛り上げよう」と若手クリエーターの研修も兼ねて制作。自虐的な内容もあるユニークなポスターが話題となり、大阪商工会議所で開かれた「商店街フォーラム」で日下さんが講演し、ほかの商店街でも開こうと企画された。複数の商店街が手を挙げた中で、開催に向けて意欲的だった文の里商店街を選定。駅前に大手スーパーが出店するなど危機感を募らせていた時期でもあった。
日下さんは「(総選挙が)終了して5カ月もたって話題になっていることにびっくりした。ポスターが面白いこともあるが、僕たちが『残るもの』を作ったからだと思う。一過性のイベントならこうはならなかった。これからも『残す』にこだわりたい。ポスターを作ったスタッフが賞を取ったりと仕事で手応えをつかんだことや店主の人たちがポスターを見て喜び、意識が変わったことなどが良かった」と話す。
文の里商店街協同組合の江藤明理事長は「多くの人がポスターを見に来るようになって売り上げが伸びている店もある。これまでは商店街の活性化しか考えていなかったが、地域も含めて考えるようになった」と話す。「5月10日は10時から(約40店が参加する)100円商店街を開くので来てほしい」とも。